残業減でも疲弊が増す3つの理由|工数の見えない圧縮を解剖
2024年問題の対応で残業時間は帳簿上は減りました。しかし現場監督の顔色は以前より悪い。その理由は「工数の見えない圧縮」にあります。外壁塗装の現場で何が起きているか、段取りから日報処理まで分解して解説します。
残業が減っても疲弊が増える理由とは何か
結論から言います。残業時間が減った分だけ、業務密度が上がっているからです。
夜21時の事務所。現場監督の机には、その日の5現場分の日報がLINEで溜まっています。確認・転記・翌日の段取り(準備・手配)指示。これを就業時間内に終わらせる方法は、今のところ「速く処理する」しかありません。
2024年問題への対応で、多くの塗装会社が取り組んだのは「残業の上限設定」でした。しかし業務量は減っていません。具体的に圧縮された工数(作業時間)は以下のとおりです。
- 発注書の作成・確認:月10現場で15〜20時間
- 色番(日塗工・ND・SRなどのカラー品番)の確認作業:月5〜8時間
- 職人への工程変更の連絡・再周知:月3〜5時間
- 日報集計と請求書照合:月8〜12時間
これらは「残業でやっていた仕事」ではなく、「以前は時間をかけてできていた仕事」です。今は同じ時間内に詰め込むしかない。それが疲弊感の正体です。
残業規制は正しい方向です。ただし業務の総量を変えずに時間だけ削れば、単位時間あたりの負荷は必ず上がります。これを「見えない工数圧縮」と呼びます。
塗装現場で特に重い『見えない工数』3つ
塗装業には他業種にはない固有の工数があります。その代表格が「下地処理の記録管理」「色番の照合」「歩掛の手組み」の3つです。
築30年マンション改修の現場を例に挙げます。外壁のケレン(旧塗膜や錆の除去作業)等級・下地処理の種別・希釈率・標準塗布量(㎡あたりの使用量の基準値)。これらは工程ごとに記録が必要で、写真・メモ・日報への転記と3回同じ情報を入力することもあります。
色番の管理も見落とされがちな工数です。「N80」と「ND-101」を混同した発注を1度でも経験した会社なら分かります。確認の電話1本で済むこともあれば、塗料が届いてから発覚するケースもあります。誤発注の修正には半日以上かかることがあります。
歩掛(作業1単位あたりの工数)の計算も同様です。
- 吹付(スプレー塗装)と刷毛塗りでは歩掛が大きく異なります
- 見切り(塗り分けの境界線処理)の多い物件は養生だけで人工(1人1日分の労働量)が変わります
- これを経験値で脳内計算している現場監督は少なくありません
脳内計算は疲れます。そして間違えます。この3つの工数が、残業削減後に最初に「歪み」として出てくる箇所です。
なぜAngaは塗装業専用に作られたのか
Angaは汎用の業務効率化ツールではありません。塗装会社の経営者が、自社の課題を解決するために作ったAIアシスタントです。
開発者は株式会社イーテクノスの井上恭介氏。塗装会社を経営する中で、「現場ごとの原価が見えない」「色番N80とND-101を混同した発注ミスを繰り返す」「職人が略称で呼ぶ塗料名(例:クリマイ→クリーンマイルドシリコン)を毎回確認しなければならない」という実務の壁に直面しました。
現場帰りの軽トラでスマホのメモに打ち込んでいた情報が、翌朝の事務処理で全て手作業になる。その非効率を、外側から見たコンサルタントではなく内側から経験した人間が設計しています。
Angaの特徴は機能の多さではなく「塗装業の言語を話せること」にあります。
- 職人ごとの略称・呼び名を学習し、正式品番に自動で紐づけます
- 現場ごとの人工・材料費・歩掛を蓄積し、利益の見える化を支援します
- 色番の入力ミスをパターンで検知し、発注前に確認を促します
「塗装業の匂いを知らないツール」とは根本的に違います。発注書の雛形も、塗装工事に即した項目構成になっています。汎用ツールに塗装業を合わせるのではなく、塗装業に合わせて作られている点が最大の違いです。
工数圧縮に対応するために今できること
「見えない工数圧縮」への対処は、大きく2つの方向があります。業務を削るか、処理速度を上げるかです。
ただし塗装業で「削れる業務」は限られています。ケレン等級の記録を省けば品質管理が崩れます。色番の確認を省けば誤発注が増えます。歩掛の計算を省けば原価が狂います。削れるのは「入力の手数」であって「確認の精度」ではありません。
現実的な対処は以下の順番で考えると整理しやすいです。
- まず「繰り返している確認作業」を洗い出します。月に何回、色番の確認電話をかけているか数えてみてください
- 次に「脳内計算している歩掛」を書き出します。ベテラン監督の計算ロジックが属人化しているケースは多いです
- 最後に「日報・発注・請求の転記回数」を確認します。同じ情報を3回入力している工程が必ずあります
この3点が明確になれば、どこにツールを当てるべきかが見えてきます。
外壁塗装10現場を抱える会社で、上記の改善だけで月30時間以上の工数が戻ってきた事例は珍しくありません。残業を削るだけでなく、削った分を補う仕組みを持つことが、2024年問題後の塗装会社に必要なことです。Angaはその仕組みの一つとして設計されています。
残業は減ったけど、頭の中は全然休めてないですよ