工事別に儲かった現場が分からない3つの理由
月末に通帳の残高を見て「今月は儲かった」と判断していませんか。その感覚、実は現場ごとの黒字と赤字を相殺しているだけかもしれません。
1. 決算は黒字なのに、どの現場が足を引っ張ったか分からない
2. 原因1:見積りと実績が別のフォーマットで動いている
3. 原因2:一人親方への支払いが「現場ひも付け」されにくい
4. なぜ今まで放置されてきたのか
5. 仕組みで断つには、入力の場所を一つに絞る
決算は黒字なのに、どの現場が足を引っ張ったか分からない
外壁塗装を10件抱えている会社で、決算は黒字。でも社長に「一番利益が出た現場はどこですか」と聞くと、答えに詰まる。これはよくある光景です。
材料費は塗料屋への支払いを月ごとにまとめて計上、人件費は職人への人工(にんく:作業員1人1日分の稼働単位)払いを現場ごとに分けずに給与としてまとめて処理する。これだと工事Aで使った塗料と工事Bで使った塗料が帳簿の上で混ざります。
結果として見えるのは「今月の粗利」だけ。どの現場が稼いで、どの現場が赤字を吸収したのかは、誰にも分かりません。
原因1:見積りと実績が別のフォーマットで動いている
多くの塗装会社では、見積書はエクセルか専用ソフトで作ります。ところが実際に現場で使った塗料の缶数、追加で発生したケレン(下地の錆や旧塗膜を削る作業)の人工は、日報や職人からの口頭報告で別管理になっています。
見積り時の想定と、実際に現場で動いた材料・人工が、そもそも突き合わせる仕組みになっていない。だから「見積り通りに終わったか」を工事ごとに検証できません。
見積りは工事別、実績は月別という矛盾
見積りは工事ごとに細かく分けて作るのに、支払いの実績データは月次でしか集計しない。この非対称が、原価管理を工事別にできない最大の理由です。
原因2:一人親方への支払いが「現場ひも付け」されにくい
塗装工事は自社の職人だけでなく、一人親方や協力会社に出面(でづら:日当ベースの稼働実績)で発注するケースが多い会社です。
請求書には「〇月分」とまとめて書かれ、どの現場に何人工入ったかが明記されないことがあります。経理担当がそれを工事ごとに割り振り直す作業は、正直手間がかかりすぎて後回しにされがちです。
結果、外注費という大きな塊のまま計上され、工事別の原価には反映されません。特に元請から一括で受けた大型改修などは、複数現場の人工が同じ請求書に混在することもあり、余計に分解が難しくなります。
なぜ今まで放置されてきたのか
理由は単純で、忙しいからです。塗装会社の事務方は少人数、経理と現場管理を兼任している会社も珍しくありません。
工事別に集計する仕組みを作るには、見積りソフト・発注書・請求書・給与計算のフォーマットをそろえる必要があります。これを整備する時間を取るくらいなら、目の前の現場を回す方が優先されてきました。
加えて「決算が黒字なら経営としては問題ない」という感覚が根強くあります。ですが黒字の中身に赤字現場が隠れている状態は、次の見積りにも同じ値付けミスを繰り返させる原因になります。原価が見えないまま次の見積りを作れば、赤字パターンは再生産されるだけです。
決算は黒字なのに、どの現場で儲けたのか聞かれると答えられなかった
仕組みで断つには、入力の場所を一つに絞る
工事別原価管理が定着しない会社の共通点は、入力する場所がバラバラなことです。見積りはA、発注はB、日報はC、支払いはDという状態では、突き合わせる作業自体が新しい負担になります。
逆に言えば、見積り・発注・実績を同じ工事番号でひも付けて入力できれば、集計は自動でついてきます。特別な会計知識は要りません。
私たちイーテクノスも塗装会社を経営していて、まさにこの「現場ごとの利益が決算まで見えない」状態に長年悩まされました。そこで自社の現場で使うために作ったのが、見積りから発注、原価管理までを工事単位でつなぐcrewです。
工事番号を軸に材料費と人工を紐づけるだけで、赤字現場が決算を待たずに見えるようになります。まずは今抱えている現場を1件、工事別に集計し直すところから試してみてください。
よくある質問
Q. 塗装業で工事別に原価管理をするには、何から手をつければいいですか
まず見積りに工事番号をふり、発注書と請求書にも同じ番号を書く運用から始めてください。番号がそろえば、あとから材料費と人工を工事ごとに突き合わせられます。全現場を一気に変えず、まず1〜2件で試すのが定着のコツです。
Q. 一人親方や協力会社の請求書が月まとめでも、工事別に分けられますか
請求書自体は月まとめでも構いません。発注時点で工事番号を伝え、協力会社にも現場ごとの人工数を記録してもらう運用に変えれば、後から工事別に割り振れます。発注時の一言が分岐点になります。
Q. エクセルでも工事別原価管理はできますか
できますが、見積り・発注・実績を別シートで管理していると転記ミスや漏れが起きやすくなります。工事数が10件を超えたあたりから、専用ツールで一元管理する方が入力の手間も集計の精度も上がります。
あわせて読みたい
- 『現場写真と進捗報告はLINEグループに流すだけ』の塗装会社が、過去のやり取りを検索できず言った言わないの施主トラブルを繰り返す理由
- 『日報は現場終わりに手書きで提出させている』塗装会社が、写真と報告内容の紐付けができず本社確認に時間がかかり工事トラブル対応が遅れる理由
- 『相見積もりは他社の金額を聞いてから合わせる』塗装会社が、見積もりソフトを導入せず根拠のない値付けで失注と薄利受注を繰り返す理由