塗料の在庫管理とは?数値化できない理由を解説!

塗料の在庫管理とは?数値化できない理由を解説!

更新日:2026年10月14日 | 約9分で読めます | 監修:井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

神戸市の塗装会社では、塗料の在庫を職人の感覚だけで発注し、余剰在庫と現場の塗料切れを同時に抱えるケースが見られます。この記事では神戸市の塗装現場特有の事情を踏まえ、在庫管理が数値化されない理由と解決の方向性を扱います。読み終える頃には、自社の在庫管理のどこに手を入れればよいかが見えてきます。


目次

  1. 神戸市の塗装現場で在庫管理が後回しになる事情とは
  2. 日報や出面の管理が回らなくなると在庫管理も崩れる理由
  3. 塗料の在庫管理でよくある困りごと
  4. 塗料の在庫管理を数値化して整える方法
  5. 在庫管理の仕組みを導入する手順
  6. 塗料の在庫管理を進めるうえでの注意点

神戸市の塗装現場で在庫管理が後回しになる事情とは

坂の多い市街地と現場間移動の負担

神戸市は北側に山、南側に海が迫る地形で、住宅街の多くが傾斜地に広がっています。現場間の移動には時間がかかりやすく、職人が塗料や資材を忘れた場合、取りに戻るだけで半日近くの段取りが崩れることもあります。こうした移動の負担が、必要な分より多めに塗料を車に積んでおくという感覚的な在庫の持ち方につながっています。

元請からの急な追加工事と塗料の手配

神戸市内では戸建て住宅と中小規模のマンション改修が混在し、元請からの追加工事や仕様変更が現場の途中で入ることも珍しくありません。急な発注では色番(日塗工の色番号)や希釈率の確認が後回しになりやすく、とりあえず近い色で手配してしまう判断が重複在庫の原因になります。

繁忙期と閑散期で変わる在庫の必要量

外壁塗装は気候の影響を受けやすく、神戸市でも梅雨や真夏を避けた時期に依頼が集中する傾向があります。繁忙期には在庫が足りず現場を止めかねない一方、閑散期には余った塗料が倉庫に眠ったままになりやすく、年間を通した在庫量の基準を持たない会社ほどこの振れ幅に振り回されます。

一人親方と中小塗装会社に共通する体制の薄さ

神戸市の塗装業には一人親方や数名規模の会社も多く、発注・施工・事務作業を一人、または少人数で兼ねているケースが一般的です。在庫管理に専任の担当を置く余裕がないため、発注は職人の経験と勘に頼る状態が続きやすく、数値化の優先順位がどうしても下がってしまいます。

日報や出面の管理が回らなくなると在庫管理も崩れる理由

日報が後回しになると使用量の記録が消える

外壁塗装の現場では、1日の作業が終わる頃には片付けと翌日の段取りで手一杯になり、日報の記入が翌日以降に回されることがあります。その日どの色番の塗料をどれだけ使ったかという記録は、時間が経つほど職人の記憶に頼るしかなくなり、正確な使用量が残らなくなります。

結果として、在庫を数えようにも「どの現場でどれだけ減ったか」が追えず、倉庫にある在庫数と帳簿上の数字がずれていきます。このずれが積み重なると、棚卸しをしても数字が合わない状態が常態化してしまいます。

出面と資材の消費がひも付いていない状態

出面(職人の稼働日数や人工の記録)は労務費の計算に使われますが、多くの現場ではこの出面と塗料の消費量が別々に管理されています。たとえば〇〇邸の外壁塗装で職人2名が3日稼働したという記録があっても、その3日間でどの塗料をどれだけ消費したかが紐づいていなければ、現場単位の資材コストは見えてきません。

出面と資材消費が切り離されたままだと、ある現場で塗料が想定より多く減っていても、それが下地処理のやり直しによるものか、単なる記録漏れなのかの区別がつきません。原因が分からないまま次の発注を感覚で決める、という流れが繰り返されます。

現場ごとの粗利が見えないまま発注判断をする怖さ

塗料の使用量と出面が記録されていない状態では、現場ごとの粗利も正確には把握できません。粗利が見えないまま「次の現場も同じくらい仕入れておけば大丈夫だろう」という判断を続けると、利益を圧迫している現場に気づかないまま同じ発注パターンを繰り返すことになります。

日報と出面の管理が崩れることは、単に事務作業が滞るというだけでなく、在庫と原価の両方が見えなくなるという点で塗装会社の経営に直接関わってきます。この状態を放置すると、余剰在庫と塗料切れが同時に起きる構造から抜け出しにくくなります。

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塗料の在庫管理でよくある困りごと

色番や希釈率違いで同じ塗料が重複発注される

同じメーカーの同じ塗料でも、色番や希釈率の指定を現場ごとに確認しないまま発注すると、似たような在庫が複数できてしまうことがあります。倉庫を見ると似た色の缶が並んでいるのに、実際にはどれも中途半端な量しか残っていない、という状況は多くの塗装会社で見られる悩みです。

余った塗料が倉庫で開封済みのまま劣化する

現場で使い切らなかった塗料は、次の現場で使う予定のまま倉庫に戻されることがあります。しかし開封済みの塗料は時間の経過とともに分離や硬化が進みやすく、次に使おうとしたときには品質が落ちていて結局使えない、という事態も起こり得ます。

現場で塗料が足りず作業が止まる

標準塗布量の見込みが甘いまま発注すると、下地の状態や塗り回数によって想定より多くの塗料を使ってしまい、作業中に塗料が切れることがあります。追加の塗料を取りに戻る、あるいは別の現場の在庫を融通するといった対応が必要になり、段取りが崩れる原因になります。

標準塗布量を把握していないため発注量が読めない

外壁の材質や下地の状態によって、塗料の標準塗布量(一定面積あたりに必要な塗料の目安量)は変わってきます。この基準を会社として持たず、職人ごとの感覚で「このくらいあれば足りるだろう」と見積もっていると、現場規模が変わるたびに発注量の精度がばらついてしまいます。

誰が何をいつ使ったか分からず棚卸しができない

使用量の記録が現場や職人ごとにばらばらだと、棚卸しをしようにも「いつ・誰が・どの現場で・何を使ったか」を遡って確認する手段がありません。主な困りごとは次のとおりです。

  • 似た色番の塗料が倉庫に複数並び、どれが使える在庫か判断できない
  • 開封済みの塗料の状態を誰も把握しておらず、使用前に確認が必要になる
  • 棚卸しの数字と実際の在庫量が合わず、毎回時間をかけて照合する

こうした困りごとが積み重なると、在庫管理そのものが「やっても合わない作業」という印象になり、ますます感覚に頼る発注へと戻っていく悪循環につながります。

塗料の在庫管理を数値化して整える方法

現場ごとに使用量を記録する仕組みを作る

塗料の在庫を感覚ではなく数値で管理する第一歩は、現場ごとの使用量を記録する仕組みを作ることです。神戸市の外壁塗装の現場では戸建てとマンション改修が混在しやすく、現場ごとの使用量にばらつきが出ます。どの現場でどれだけ使ったかを残す仕組みがなければ、発注の根拠は職人の記憶に頼るしかありません。

色番・希釈率・標準塗布量を基準に発注量を決める

発注量を決める基準として、色番(日塗工などの塗料の色の識別番号)・希釈率・標準塗布量を数値で持っておく方法があります。同じ色に見えても希釈率が違えば必要量は変わりますし、下地処理の状態によって塗布量も変動します。こうした基準をあらかじめ決めておけば、面積から必要量を逆算しやすくなります。

日報と資材の消費を結びつけて記録する

日報に資材の使用量を記録する項目を加えると、出面(現場ごとの人工の記録)と塗料の消費が同じ記録の中でつながります。誰がいつ何をどれだけ使ったかが残っていれば、在庫の減り方を後から追いかけられます。日報と資材情報を分けて管理している会社ほど、在庫の実態が見えにくくなる傾向があります。

在庫の棚卸しを定期的な業務として組み込む

記録の仕組みができても、棚卸し自体を行わなければ数字と実態がずれていきます。月に一度など決まったタイミングで倉庫の在庫を数えて記録と照合する作業を、通常業務の一部として組み込む方法があります。棚卸しを特別な作業として扱うと後回しになりやすく、結局は感覚管理に戻ってしまいます。

管理の仕方 発注の精度 余剰在庫の出やすさ
職人の感覚に頼る発注 現場や担当者によってばらつきやすい 色番・希釈率違いで重複しやすい
使用量を記録し基準で発注する 面積・塗布量から逆算しやすい 棚卸しと組み合わせれば抑えやすい

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送られた日報が出面台帳と労務費に自動でつながり、現場ごとの粗利を確認できます。

  • 出面台帳への自動記録・労務費の自動計算
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  • 現場ごとの粗利レポート(金額が見えるのは管理者だけ)
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在庫管理の仕組みを導入する手順

まず現状の発注と使用量を洗い出す

仕組みを作る前に、現状どのように発注し、どれだけ使っているかを洗い出す作業から始めます。過去の発注書や納品書、倉庫にある在庫を一度確認するだけでも、重複発注や使われないまま残っている塗料が見えてくることがあります。ここで実態を把握しないまま新しい記録方法だけ導入すると、記録と現実がずれたまま運用が始まってしまいます。

日報の記録項目に資材の情報を加える

現状を把握したら、日報の記録項目に使用した塗料の種類や数量を加えます。現場名・作業内容に加えて資材の消費を記録する欄を設けることで、出面と資材の消費が同じ記録の中に残るようになります。

現場監督と職人で記録のルールをすり合わせる

記録項目を決めても、現場監督と職人の間で記入のルールが揃っていなければ、記録の精度にばらつきが出ます。何をどの単位で記録するか、誰が記入するかを事前にすり合わせておくことで、記録そのものが形骸化しにくくなります。

小さな現場から試して運用を広げる

いきなり全現場に新しい記録方法を導入すると、現場側の負担が一気に増えて続かなくなることがあります。まずは一つか二つの現場で試し、記録のしやすさや抜け漏れの有無を確認してから、他の現場に広げていく進め方があります。

塗料の在庫管理を進めるうえでの注意点

記録の手間が増えすぎると現場で続かない

在庫管理を数値化しようとするあまり、記録項目を増やしすぎると現場での記入が負担になります。朝から晩まで外壁塗装の作業に追われる現場で、細かすぎる記録を求めれば、結局は後回しにされて記録が抜け落ちていきます。記録は必要最低限の項目から始め、現場で無理なく続けられる範囲に留める視点が欠かせません。

職人の感覚をすべて否定しない姿勢

数値管理を進める目的は、職人の感覚を否定することではなく、感覚と記録を組み合わせることにあります。長年の経験で培われた塗布量の勘や下地の状態を読む力は、数字だけでは置き換えられない部分です。記録はあくまで感覚を裏付け、引き継ぎやすくするための材料として位置づける考え方が合っています。

数字だけを追って現場の実情を見失わない

在庫の数字が整ってくると、数字の管理そのものが目的化してしまうことがあります。天候による工程の遅れや、元請からの急な追加工事など、現場には数字に表れない事情が常にあります。数字はあくまで判断材料の一つとして扱い、現場の実情と照らし合わせながら発注を見直す姿勢が求められます。

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よくある質問

Q. 塗料の在庫管理はエクセルだけでも始められますか?

現状把握の段階ではエクセルでも始められます。ただし日報と資材の記録が別々の表になっていると転記の手間が増え、更新が止まりやすくなります。まずは発注・使用量・在庫を一つの表にまとめることから始める方法があります。

Q. 余った塗料はいつまで保管できますか?

保管期間は塗料の種類やメーカーの表示によって異なるため、製品ごとの表示を確認する必要があります。開封済みの缶は特に劣化が進みやすいため、保管期間だけでなく保管環境にも注意が必要です。

Q. 一人親方でも在庫管理の仕組みは必要ですか?

現場数が少なくても、色番や希釈率違いの重複発注、倉庫での劣化は起こり得ます。大掛かりな仕組みでなくても、使用量と残量を記録するだけで発注判断の精度は変わってきます。

この記事の監修

井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

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棚を見れば余りは分かる。でも使いかけ缶が何リットル残っているかは誰にも分かりません。目視管理が破綻する理由を、症状・原因・放置の背景・断ち方の順に分解します。


1. 症状:買い足しのはずが、また同じ色を1缶買っている

2. 原因①:在庫データが「缶単位」でしか記録されていない

3. 原因②:色番と職人の呼び方がズレたまま在庫台帳に乗る

4. なぜ今まで放置されてきたのか

5. どうすれば断てるか:記録の単位を「缶」から「使用量」に変える

症状:買い足しのはずが、また同じ色を1缶買っている

外壁塗装の現場で、ND(日本塗料工業会の色番)の同じ色番を3ヶ月で2回発注していた。倉庫の棚を見に行ったら、開封済みの缶が奥に半分隠れていた。こういう話は塗装会社なら一度は聞いたことがあるはずです。

棚を目視して「まだあるな」「もうないな」と判断する運用は、缶の中身を見ていません。見ているのは缶が「ある・ない」の二択だけです。開封済みの缶に残量がどれだけあるかは、蓋を開けて撹拌しないと分かりません。

結果として、現場は「念のため新品を買っておく」方向に倒れます。余っている色は倉庫の奥で固まり、足りない色は現場に届く前に発注し忘れる。この2つが同時に起きるのが、目視在庫管理の症状です。

原因①:在庫データが「缶単位」でしか記録されていない

多くの塗装会社の在庫管理は、発注書か納品書ベースで「◯缶入荷」という記録止まりです。缶を開けて何リットル使ったかは、日報や職人の記憶にしか残りません。

歩掛(作業1単位あたりの工数)と標準塗布量から逆算すれば使用量は推定できますが、その計算を毎回する会社はまずありません。理由は単純で、現場が10件あれば発注書の整理だけで月20時間は飛ぶからです。使用量の逆算まで手が回る余力は現場監督にも事務方にも残っていません。

つまり在庫データそのものが「缶が何個あるか」しか表現できない設計になっています。棚を見て判断する運用は、データの粗さをそのまま引き継いでいるだけです。

原因②:色番と職人の呼び方がズレたまま在庫台帳に乗る

クリーンマイルドシリコンを職人が「クリマイ」と呼び、発注担当がそれを別の類似色と混同する。塗料の世界では、正式な色番(日塗工・SR)と現場の口語がズレることがよくあります。

このズレが在庫台帳に乗ると、台帳上は「N-80が3缶ある」ことになっていても、実際に棚にあるのは色味の近い別ロットだったりします。棚を目視しても、素人目にはほぼ同じ色に見えるため、間違いに気づくのは現場で希釈率を合わせて吹付した後です。

台帳と現物のズレは、目視管理では原理的に発見できません。目で見て分かるのは色の系統だけで、ロットや正確な色番までは判別できないからです。

なぜ今まで放置されてきたのか

「困るのは月に数回」だから優先順位が上がらない

在庫のズレで実害が出るのは、買い足し忘れで現場が止まる日か、余剰在庫の廃棄費用が発生した時だけです。頻度で言えば月に数回程度なので、日々の受発注や人工の調整に比べると後回しにされ続けます。

システム導入のコストが「棚卸しの手間」に見合わない

在庫管理システムを入れるとなると、既存の缶すべてにバーコードを貼るような初期作業が発生します。中小の塗装会社にとって、この初期投資は「今困っていないなら後でいい」と判断されがちです。

この2つが組み合わさって、目視管理は何年も温存されます。壊れているのは分かっているが、壊れ方が致命的ではないので直さない、という状態です。

どうすれば断てるか:記録の単位を「缶」から「使用量」に変える

根本原因は、在庫データが缶単位の粗い解像度しか持っていないことでした。断つには、使用した量をその場で記録する仕組みに変えるしかありません。

現場で使った分をスマホから数量入力するだけで、残量が自動計算される。色番も職人の呼び方ではなく登録データから選ぶので、クリマイとクリーンマイルドシリコンの表記ズレも起きません。

私たちイーテクノスは塗装会社を自社で経営していて、この棚卸しのズレに何度も泣かされてきました。その経験から、現場の使用量をLINEで簡単に記録し在庫を自動更新するAngaを作りました。棚を見に行く前に、スマホで残量が分かる状態を作れます。

棚を見て「まだあるな」はもう信じてない。開けてみないと分からないから。

よくある質問

Q. 塗料の在庫管理はエクセルでも十分ですか

缶単位の入出庫を記録するだけならエクセルでも運用できます。ただし使いかけ缶の残量までは反映できないため、余剰在庫や買い足し忘れの根本原因は解決しません。使用量まで記録できる仕組みと組み合わせる必要があります。

Q. 棚卸しの頻度はどれくらいが適切ですか

月1回の棚卸しが一般的ですが、使いかけ缶の残量まで正確に把握するのが目的なら、棚卸しの頻度を上げるより、現場で使うたびに使用量を記録する運用に変える方が効果的です。

Q. 色番の管理ミスを防ぐにはどうすればいいですか

職人の口語(クリマイなど)と正式な色番(日塗工・NDなど)がズレやすいのが原因です。発注や在庫登録の際に正式な色番データから選択する運用にすると、表記ゆれによる誤発注を減らせます。

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