塗料の在庫管理とは?二重発注が起きる理由を解説!

塗料の在庫管理とは?二重発注が起きる理由を解説!

更新日:2026年10月17日 | 約10分で読めます | 監修:井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

倉庫の棚に同じ色番の塗料缶が何本も並び、担当者が首をかしげた経験はないでしょうか。この記事では塗料の在庫管理を紙・Excel・専用アプリ・LINEで行う場合の違いを比較します。読むと自社の在庫管理がなぜ二重発注や余剰在庫を招くのか、どの手段に切り替えるべきかが分かります。


目次

  1. 塗料の在庫管理とは何をすることか
  2. 比べる前に押さえておきたい評価軸
  3. 紙・Excel・専用アプリ・LINEを比較する
  4. 手段ごとに向いている会社・向いていない会社
  5. 在庫管理を見直す選び方と導入の手順(利用イメージ)
  6. 在庫管理を切り替えるときの注意点

塗料の在庫管理とは何をすることか

在庫管理の対象になる情報

塗料の在庫管理と聞くと、缶の本数を数えるだけと思われがちです。しかし実際に管理すべき情報は本数だけでなく、色番・希釈率・使用期限・保管場所まで多岐にわたります。外壁塗装の現場で同じ日塗工番号の塗料でも、ロットによって微妙に色味が違うことがあるため、ロット情報まで把握できていないと後から困る会社も少なくありません。

色番・希釈率・使用期限の管理が必要な理由

塗料は色番だけ一致していても、希釈率の記録が残っていないと、追加塗装のときに前回と同じ艶や仕上がりを再現しにくくなります。たとえば3分艶で仕上げた外壁の一部を後日補修する場合、希釈率の記録がなければ職人の勘に頼ることになり、見切り部分の仕上がりに差が出てしまいます。

また塗料には使用期限があり、期限切れの在庫を知らずに使うと密着不良などの不具合につながる可能性があります。色番・希釈率・使用期限の3つを合わせて管理して初めて、在庫管理と呼べる状態になります。

目視管理が長年続いてきた背景

塗装業界では長年、倉庫の棚を見て「まだ残っている」「そろそろ発注だ」と判断する目視管理が主流でした。職人数が少なく現場も限られていた時代は、この方法でも大きな支障が出にくかったためです。

しかし複数の現場を同時に抱えるようになると、誰がどの現場でどの色番をどれだけ使ったのかが見えづらくなります。目視管理が悪いのではなく、現場の数や職人の動きが増えたことで、目視だけでは追いきれなくなってきたというのが実情です。

比べる前に押さえておきたい評価軸

手間のかかり方

在庫管理の手段を比べるときは、まず記録にかかる手間を見る必要があります。現場で使った塗料の量を誰が、いつ、どこに記録するのかによって、同じ「記録する」という作業でも負担の大きさはまったく違ってきます。

ミスの起きやすさ

次に見ておきたいのが、色番の記入ミスや本数の数え間違いといった、人の手によるミスの起きやすさです。手書きや手入力の工程が多いほど、ミスが紛れ込む余地も増えていきます。

現場と事務所での共有のしやすさ

塗装会社の在庫情報は、現場で使う職人と、発注を判断する事務所の両方が見られて初めて意味を持ちます。片方にしか情報がない状態だと、事務所が「在庫があると思って発注しなかった」「もう無いと思って余分に発注した」といったズレが生まれやすくなります。

主な評価軸は次のとおりです。

  • 手間のかかり方(記録・集計にどれだけ時間がかかるか)
  • ミスの起きやすさ(記入漏れ・二重発注につながるミスの起きやすさ)
  • 共有のしやすさ(現場と事務所でリアルタイムに情報を見られるか)
  • 費用感と続けやすさ(導入や運用にかかるコストと、無理なく続けられるか)

費用感と続けやすさ

最後に見るべきは、導入や運用にかかる費用と、それを職人も含めて無理なく続けられるかという点です。どれだけ機能が優れていても、現場の職人が使い続けられなければ、結局は目視管理に逆戻りしてしまいます。

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紙・Excel・専用アプリ・LINEを比較する

紙の在庫表で管理する場合

紙の在庫表は、倉庫やトラックの荷台に貼っておき、使った分だけ手書きで減らしていくという、昔ながらの方法です。特別な準備がいらず、誰でもすぐに書き込めるという気軽さがあります。

ただし紙は現場ごとに1冊ずつ存在することが多く、事務所でまとめて見るには誰かが転記する手間が発生します。書き忘れや消えてしまった文字によって、実際の在庫数とズレが生じやすいのも紙特有の弱点です。

Excelで管理する場合

Excelは関数や色分けを使えるため、紙よりも集計や並べ替えがしやすくなります。色番ごとに残量を一覧表示したり、使用期限が近い塗料を目立たせたりといった工夫もしやすい方法です。

一方で、Excelファイルは基本的に事務所のパソコンに置かれることが多く、外壁塗装の現場にいる職人がその場で開いて更新するのは現実的ではありません。結局「現場で使った分は後で事務所の誰かが入力する」という運用になりがちで、入力のタイムラグが二重発注の原因になります。

在庫管理専用アプリを使う場合

在庫管理専用のアプリは、色番・数量・使用期限などをあらかじめ項目として用意しているため、入力のルールが統一されやすいという利点があります。バーコードや写真で記録できるものもあり、紙やExcelに比べると記入ミスを減らしやすい設計になっています。

ただし専用アプリは、職人一人ひとりがスマホにインストールして操作を覚える必要があり、現場に慣れた職人ほど「また新しい操作を覚えるのか」と抵抗を感じることがあります。機能が豊富な分、使いこなすまでに時間がかかる点は見ておく必要があります。

LINEで共有する場合

LINEは多くの職人が普段から使い慣れているため、新しい操作を覚える負担が少ないという強みがあります。グループに「〇〇邸でND-〇〇番を2缶使用」と一言送るだけで、現場と事務所がほぼ同時に情報を共有できます。

一方でLINEはあくまで会話の履歴であり、在庫表のように一覧で残量を把握する機能は備えていません。メッセージが流れていくため、後から「結局いま何缶残っているのか」を追うには、過去のやり取りをさかのぼる手間が発生します。

比較表から見える傾向

4つの手段を並べると、手間が少ない方法ほど共有のしやすさで弱く、共有や記録の精度を上げようとすると手間や費用が増えるという傾向が見えてきます。紙とExcelは入力が後回しになりやすく、専用アプリとLINEはリアルタイム性に優れる一方で、アプリは操作の習熟、LINEは一覧性という別の課題を抱えています。

手段 手間 ミスの起きやすさ 共有のしやすさ 費用感
紙の在庫表 記入は簡単だが転記が必要 書き忘れ・消失で起きやすい 現場ごとに分散しやすい 低い
Excel 集計はしやすいが入力が遅れがち 入力タイムラグで起きやすい 事務所中心で現場共有は弱い 低〜中程度
専用アプリ 項目が決まっており入力は安定 操作に慣れれば起きにくい 現場と事務所でほぼリアルタイム 中〜高程度
LINE 普段使いの延長で手軽 一覧性が低く見落としが起きやすい 即時共有はしやすいが一覧化は弱い 低い

手段ごとに向いている会社・向いていない会社

職人数が少なく現場が固定されている会社

職人が2〜3人で、担当する外壁塗装の現場がほぼ固定されている会社なら、紙の在庫表でも大きな混乱は起きにくいです。在庫を見る人が限られているため、二重発注の原因になりやすい情報の分断がそもそも起こりにくいからです。ただし代表者が現場に出ている間に事務所で発注判断が必要になると、紙では対応が遅れます。

複数現場を同時に抱える会社

外壁塗装とマンション改修を並行して抱えるような会社では、現場ごとに塗料が動くため、紙やExcelの更新が追いつかなくなりがちです。ある現場で使った分を記録し忘れたまま、別の現場担当が同じ色番を発注してしまう、という流れが起きやすくなります。こうした会社は、現場と事務所がリアルタイムで同じ情報を見られる手段が向いています。

色番の種類が多い外壁・屋根専門の会社

日塗工番号で何十色も扱う会社は、色番・希釈率・残量の組み合わせが膨大になり、目視と記憶に頼る管理はすぐに限界を迎えます。似た色番の缶が並ぶと、ベテラン職人でも取り違えることがあります。検索や絞り込みがしやすい専用アプイやExcelのほうが、色番管理との相性は良い傾向です。

事務所に専任の管理担当がいない会社

経理も発注も社長が兼任しているような体制では、入力の手間が少ない手段を選ばないと、結局は誰も更新しない「名ばかりの在庫表」になりがちです。LINEで現場から一言報告するだけの運用や、入力項目を絞った専用アプイのほうが、専任者不在の会社には続けやすいといえます。

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送られた日報が出面台帳と労務費に自動でつながり、現場ごとの粗利を確認できます。

  • 出面台帳への自動記録・労務費の自動計算
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在庫管理を見直す選び方と導入の手順(利用イメージ)

現状の在庫をまず棚卸しする

新しい手段を選ぶ前に、倉庫と各現場に今どれだけの塗料が残っているかを一度数える棚卸しが欠かせません。色番ごとの残量・使用期限・保管場所を紙でもよいので一覧にしておくと、その後どの手段に切り替えても引き継ぎやすくなります。

二重発注が起きている工程を洗い出す

棚卸しと合わせて、どの場面で二重発注が起きているかを振り返ります。たとえば職人が現場で足りないと判断して直接発注し、事務所の在庫表には反映されていない、といった工程のズレが典型的です。

主な洗い出しの観点は次のとおりです。

  • 誰が発注の最終判断をしているか
  • 残量の報告が現場から事務所に届くまでの経路
  • 発注してから在庫表に反映するまでの時間差

小さく始めて運用を固める

在庫管理の手段を変えるときは、全現場・全色番を一気に切り替えるのではなく、動きの多い色番や特定の現場から試すほうが失敗しにくいです。小さく始めて入力の習慣がついてから範囲を広げると、職人にも事務所にも無理のない運用になります。

利用イメージで見る在庫確認の流れ

利用イメージとして、LINEで日報を送る運用に塗料の在庫確認を組み込む場合の流れを紹介します。たとえば〇〇邸の外壁塗装を担当する職人の山田さんが、作業終了後にLINEで「〇〇邸 外壁 ND-100 残り1缶」と一言送るだけで、現場名の略称はAIが正式名称に直して記録されます。

事務所側は日報と合わせて残量の報告が自動で記録されていくため、紙の在庫表を別途更新する手間がかかりません。送信してから3分間は取り消せる猶予もあるため、職人が数量を間違えて送ってもすぐに訂正でき、現場からの報告をそのまま信頼できる仕組みになります。

在庫管理を切り替えるときの注意点

古い在庫表と新しい方法を並行させない

紙やExcelから新しい手段に切り替える際、古い在庫表を念のため残しておくと、結局どちらが正しい数字か分からなくなります。切り替えの日を決めて、その日からは旧い在庫表への入力をきっぱりやめることが、情報を一本化する近道です。

色番の入力ルールを統一する

同じ色でも「ND-100」と書く人もいれば「ND100」と省略する人もいると、検索や集計のときに別の在庫として扱われてしまいます。職人ごとに言い方や書き方が違うのは自然なことですが、事務所側で表記のゆれを吸収する仕組みがないと、在庫データの精度はすぐに崩れます。

職人の負担を増やさない工夫

在庫管理を厳密にしようとして入力項目を増やしすぎると、現場の職人が入力を面倒に感じて報告をやめてしまうことがあります。残量と色番だけなど、最低限の項目に絞って報告してもらい、希釈率や使用期限といった細かい情報は事務所側で補うくらいの役割分担が現実的です。

運用を続けるための見直しのタイミング

在庫管理の手段は、一度導入して終わりではなく、月に一度は在庫表と実際の残量にズレがないか確認する機会を設けておくと安心です。繁忙期が落ち着いたタイミングで運用ルールを見直すと、現場の実態に合わせた形に調整しやすくなります。

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よくある質問

Q. 塗料の在庫管理アプリは職人がスマホ操作に不慣れでも使えますか

専用アプイの多くは入力項目が多く、操作に慣れが必要な場合があります。一方でLINEのように普段使っているツールに在庫報告を組み込む方法なら、新しい操作を覚える負担が少なく、スマホ操作が苦手な職人でも続けやすい傾向があります。

Q. Excelで在庫管理をする場合、誰が更新すべきですか

現場ごとに職人が更新すると表記のゆれや更新漏れが起きやすいため、事務所の担当者が現場からの報告を受けて入力する形のほうが精度を保ちやすいです。ただし専任の担当者がいない会社では、更新が滞りやすい点に注意が必要です。

Q. 色番の管理だけでも紙からアプリに変える価値はありますか

色番の種類が多い外壁・屋根専門の会社では、紙だけでも検索性の差が大きく出ます。全面的な切り替えが難しくても、よく使う色番だけ先にアプイやExcelで管理し始めると、二重発注の減少を体感しやすくなります。

この記事の監修

井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

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この「現場補正」を経験と勘でやっている会社ほど、塗料使用量の見落としが起きやすくなります。3分艶の仕上げを指定されたのに、必要缶数を標準値のまま計算してしまい、追加発注で利益が消える。よくあるパターンです。

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なぜ今まで放置されてきたのか

塗装業界には、見積もりソフトを入れるより先に「うちは長年この方法でやってきた」という実績が優先される文化があります。ベテラン監督の勘は確かに精度が高く、それが逆に問題を覆い隠してきました。

しかし今、状況は変わりつつあります。職人不足や資材高騰、中東情勢による原油・ナフサ供給不安が重なり、2026年に入ってから塗装工事業の倒産件数は前年同期比で増加しています。利益率の薄い赤字受注を繰り返す余力は、もう業界全体に残っていません。

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どうすれば断てるか:計算を人から切り離す

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私たちイーテクノスも、もともとは塗装会社として現場を回してきた立場です。代表の井上自身が、面積の出し方ひとつで利益が消える経験を何度もしてきました。だからこそ、経験と勘に頼らず精度を出せる見積もりソフト「Anga」を自社の現場のために作りました。

見積もりソフトを入れることは、ベテランの勘を否定することではありません。勘を仕組みに変換して、誰が作っても同じ精度の見積もりが出せる状態にすることです。それができて初めて、赤字受注の連鎖を断てます。

よくある質問

Q. 塗装工事の見積もりソフトを導入すると、Excelとの一番の違いは何ですか?

最大の違いは、面積計算や塗料使用量の算出を人の判断に頼らず自動化できる点です。Excelは数式通りに計算しますが、係数や希釈率の設定は人が入れる必要があります。ソフトなら条件入力だけで、担当者が変わっても同じ精度の見積もりが作れます。

Q. ベテラン監督の勘に頼った見積もりの方が精度が高いのでは?

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Q. 小さい塗装会社でも見積もりソフトを導入する意味はありますか?

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