見積もりソフト未導入で失注する根本原因

見積もりソフト未導入で失注する根本原因

元請から「他社はもっと安いよ」と言われて、根拠なく値引きしていませんか。その場しのぎの値付けが、失注と薄利受注を両方招きます。


1. なぜ「他社に合わせる」見積もりが定着するのか

2. 手順1:発注前の準備|自社の「原価の下限」を数字で持つ

3. 手順2:見積もり作成|相見積もりが来たら「差の中身」を分解する

4. 手順3:提示前の確認|値引きしていい額を即答できる状態にする

5. 手作業の積算がボトルネックになっている会社へ

なぜ「他社に合わせる」見積もりが定着するのか

外壁塗装の現場で30年やってきた社長ほど、実はこの罠にはまります。

積算の根拠を数字で持っていないので、元請に「他社はA社より安い」と言われると反論できません。歩掛(作業1単位あたりの工数)も材料費も頭の中にしかないからです。

結果、その場で1〜2割引いて即答します。受注できた喜びの裏で、粗利がどこまで削れたか誰も計算していません。

現場が10件あれば、この「なんとなく値引き」が積み重なって、月末に粗利率を見て青ざめる。これがどの塗装会社にもある景色です。

値引きの根拠がないと何が起きるか

出面(現場に出た人工・日数)と材料費を積み上げていないので、値引きの限界ラインが分かりません。限界を超えて受けた現場は、完工しても赤字。逆に根拠なく高く出した現場は失注します。同じ会社で真逆の失敗が同時に起きるのはこのためです。

手順1:発注前の準備|自社の「原価の下限」を数字で持つ

合わせる前に、合わせて良い金額の下限を知る必要があります。

  • 直近の完工現場を5件選ぶ
  • それぞれの人工・材料費・希釈率(塗料の薄め具合)・使用缶数を洗い出す
  • 平米単価に換算して並べる

これで「この規模の現場ならこの単価が下限」という自社の相場が見えます。

ここでつまずく例:過去の見積書をExcelでバラバラに管理していて、5件集めるだけで半日かかる会社があります。台帳が現場ごとに書式が違うと、比較する前に力尽きます。

手順2:見積もり作成|相見積もりが来たら「差の中身」を分解する

他社が安い金額を出してきたら、まず何が違うのか分解します。

  • 下地処理の範囲(ケレンの等級、既存塗膜の劣化度合い)が同じか確認する
  • 使用塗料のグレード・缶数・標準塗布量が同じか確認する
  • 足場・養生の範囲が同じか確認する

条件が違うのに金額だけ比較しても意味がありません。ここを揃えて初めて「本当に安いのか、条件が違うだけなのか」が分かります。

ここでつまずく例:元請から「他社は坪1万円安い」とだけ聞いて、条件を聞き返さずに値引きする現場監督がいます。実際は他社が3分艶(艶を抑えた仕上げ)の安いグレードを提案していただけ、というケースは珍しくありません。

手順3:提示前の確認|値引きしていい額を即答できる状態にする

分解が終わったら、値引き余地を数字で持って商談に臨みます。

  • 手順1で出した下限単価と、今回の見積もり単価の差を計算する
  • 差の範囲内で、どこまで下げても粗利が残るか確認する
  • 下げる場合は「どの工程を削るか」もセットで提示する

これができると、元請に「他社はもっと安い」と言われても、その場で「粗利を残せる下限」を即答できます。感覚ではなく数字で会話できる状態です。

ここでつまずく例:値引きの上限だけ決めて、下げた分どこを削るか決めていないと、結局現場で人工を削って職人にしわ寄せが行きます。これが薄利受注の正体です。

他社が安いって言われるたびに、うちも下げてた。何が違うのか誰も聞いてなかった

手作業の積算がボトルネックになっている会社へ

ここまでの手順を紙とExcelでやろうとすると、5件の過去現場を洗い出すだけで数時間かかります。毎回の相見積もりでこれをやるのは、現場が忙しい時期にはまず回りません。

見積もりソフトを使う一番の理由は、この「原価の下限を出す」作業を毎回ゼロからやらなくて済むことです。過去の積算データが蓄積されていれば、条件を入れるだけで下限単価がすぐ出ます。

私たちが自社の現場で、まさにこの値引き合戦に何度も疲弊した経験から作ったのがAngaです。過去現場の積算を蓄積して、次の見積もりに自動で反映する仕組みにしています。

相見積もりのたびに電卓を叩き直す状態から抜け出したい方は、一度試してみてください。

よくある質問

Q. 見積もりソフトを導入すれば相見積もりで値引き交渉に負けなくなりますか

ソフト自体が交渉に勝たせてくれるわけではありません。過去の積算データをすぐ引き出せるようになるので、値引きしていい下限を即答できるようになります。その結果として失注と薄利受注の両方が減る、という流れです。

Q. Excelでの積算管理と見積もりソフトの一番の違いは何ですか

Excelは1件ずつ作り込む前提の道具です。過去現場の横比較や下限単価の自動算出には向いていません。見積もりソフトは複数現場のデータを蓄積して再利用する前提で作られている点が違います。

Q. 職人が少ない小規模な塗装会社でも見積もりソフトは必要ですか

現場数が月に数件でも、相見積もりのたびに感覚で値引きしていると粗利は削れ続けます。規模が小さいほど1件の赤字が経営に響くので、むしろ小規模会社ほど下限単価を数字で持つ効果は大きいです。

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坪単価見積もりで250万円失注した理由

坪単価見積もりで250万円失注した理由

築22年、延床38坪の戸建て。相見積もり3社の中で唯一、坪単価だけで出した会社が落ちました。積算根拠を示せなかった現場監督が、その後どう変えたかの記録です。


1. 見積書1枚、根拠ゼロで挑んだ現場

2. 施主からの一言で崩れた

3. 次の現場で積算をやり直した3時間

4. 積算を毎回3時間かけられるかという問題

5. 手計算からソフトに切り替えて変わったこと

見積書1枚、根拠ゼロで挑んだ現場

埼玉県内、築22年の戸建て住宅。延床38坪、外壁面積はおよそ150平米でした。

施主は3社に相見積もりを依頼していました。うちの現場監督は坪単価5.5万円で計算し、税込209万円の見積書を1枚だけ提出しました。

内訳は「外壁塗装一式」「屋根塗装一式」「足場一式」の3行だけです。使用塗料も缶数も、下地処理の範囲も書いていませんでした。

他の2社は日本ペイントのパーフェクトトップを使い、上塗り2回・下塗り1回の3回塗りで、使用缶数まで書いた見積書を出していました。1社は14缶、もう1社は16缶という具体的な数字が入っていたそうです。

施主からの一言で崩れた

施主から現場監督に電話がありました。

缶数書いてない見積もりって、信用していいんですかね──施主に真顔で聞かれました

監督は答えられませんでした。坪単価で出しただけで、実際に足場面積から塗布面積を逆算し、標準塗布量(塗料1缶でどれだけ塗れるかの目安)から缶数を割り出す作業をしていなかったからです。

その場で「確認して折り返します」と言うしかありませんでした。折り返しの電話をする前に、施主は他社に決めていました。失注の連絡はメール1通で終わりました。

次の現場で積算をやり直した3時間

この失注の翌週、似た規模の築25年・延床35坪の現場が入りました。

今度は坪単価を使わず、面積から積算をやり直しました。外壁面積143平米、下塗りシーラー1回、中塗り・上塗りにクリーンマイルドシリコン2回の3回塗りです。

標準塗布量を1缶あたり約35平米として逆算すると、3回塗りで必要な缶数は13缶になりました。ここに軒天・破風の塗装、シーリング打ち替え30メートル分を別途足しました。

積算にかかった時間は約3時間です。人工(作業員1人1日分の工数)は塗装だけで6人工、足場架払いと養生を含めると全体で8人工と算出しました。

見積書には「クリーンマイルドシリコン13缶」「シーリング打ち替え30m」「足場面積180平米」まで書きました。この現場は3社中で唯一、金額ではなく工程の詳しさで選ばれたと施主から後日聞きました。

坪単価と積算根拠、施主が見ているのはどちらか

坪単価だけの見積もりは、施主から見ると「本当にうちの家に合わせて計算したのか」が分かりません。缶数・平米数・人工まで書かれた見積書は、多少高くても納得материал材料になります。値引き交渉が減ったのも、この現場からでした。

積算を毎回3時間かけられるかという問題

ここで新しい問題が出てきます。3時間かけて積算した現場は結果的に受注できましたが、月に10件見積もりを作るとしたら30時間かかる計算です。

現場が10件あれば、発注書と見積書の作成だけで月20時間は普通に飛びます。積算根拠まで毎回手計算していたら、現場に出る時間が削られていきます。

塗装工事業では2026年に入ってから倒産件数が前年より増えているという業界の動きもあります。職人不足と資材高騰が重なり、どんぶり勘定のまま利益が薄い受注を続けた会社ほど、体力を失っているのが実情です。

積算根拠を出せる会社が選ばれる一方で、その根拠を出す作業に時間を取られすぎても経営が持ちません。この矛盾をどう解くかが、次の課題になりました。

手計算からソフトに切り替えて変わったこと

うちが最終的に選んだのは、面積入力から缶数・人工・金額まで自動で積算する見積もりソフトでした。

開発したのは塗装会社を経営してきたイーテクノスの井上です。私たちも現場で同じ悩みを抱えていたので、坪単価の勘に頼らず、誰が作っても同じ根拠が出せる仕組みが必要だと考えて作りました。

Angaは外壁・屋根の面積を入れると、標準塗布量から缶数を自動計算し、人工と金額まで積算根拠付きで見積書に反映します。手計算で3時間かかっていた作業が、感覚的には30分程度まで縮む現場もあります。

積算根拠を毎回出しながら、時間も残す。その両立が、坪単価頼みの見積もりから抜け出す一番の近道でした。

よくある質問

Q. 塗装工事の見積もりソフトを導入すると積算根拠は自動で作れますか

外壁・屋根の面積、使用塗料の標準塗布量を入力すれば、必要缶数や人工数まで自動算出できるソフトがあります。手計算で3時間かかっていた積算作業を大幅に短縮でき、坪単価だけの見積書から脱却できます。

Q. 坪単価の見積もりだけでは失注しやすいのはなぜですか

施主は複数社を比較する際、缶数・工程・平米数まで書かれた見積書を根拠として重視します。坪単価一式の見積もりは工程が見えず、他社と比較された際に不信感を持たれやすく、失注や過度な値引き要求につながります。

Q. 見積もりソフトは小規模な塗装会社でも使えますか

社員数名の個人事業主規模でも使われています。積算根拠の作成にかかる時間を減らせるため、現場管理と兼務している一人親方や少人数の会社ほど時間的な効果を感じやすい傾向があります。

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